唇の距離 #2

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外に出ると、少し冷えた夜の空気が酔った頬に心地いい。 「ごちそうさま。 お料理、どれもすごく美味しかった」 金曜の夜、微酔いで、 横には戸川君がいて。 戸川君を見上げる私の顔は 素直にほころんだ。 「そうだろ? アメリカにいる時、寿司には困らなかったけど、ああいう惣菜には飢えてたな」 あの兄ちゃんからあの味は意外だろ?と戸川君も機嫌良さそうに笑った。 お店がある細い路地を抜けると、 戸川君は大きなマンションを指差した。 「ほら、あそこの203号室だからな。 片付いたら呼んでやるよ」 「私と部屋番号、一緒だ」 不意を突く“呼んでやるよ”発言に、照れ臭くて咄嗟に“うん”と言えなくて。 「そうだったよな。あん時は四階まで上らされたっけ。階段で」 「ごめん。 …だって動転してたんだから」 逸れていく会話に、うまく返事できなかった自分を悔やむ。
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