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外に出ると、少し冷えた夜の空気が酔った頬に心地いい。
「ごちそうさま。
お料理、どれもすごく美味しかった」
金曜の夜、微酔いで、
横には戸川君がいて。
戸川君を見上げる私の顔は
素直にほころんだ。
「そうだろ?
アメリカにいる時、寿司には困らなかったけど、ああいう惣菜には飢えてたな」
あの兄ちゃんからあの味は意外だろ?と戸川君も機嫌良さそうに笑った。
お店がある細い路地を抜けると、
戸川君は大きなマンションを指差した。
「ほら、あそこの203号室だからな。
片付いたら呼んでやるよ」
「私と部屋番号、一緒だ」
不意を突く“呼んでやるよ”発言に、照れ臭くて咄嗟に“うん”と言えなくて。
「そうだったよな。あん時は四階まで上らされたっけ。階段で」
「ごめん。
…だって動転してたんだから」
逸れていく会話に、うまく返事できなかった自分を悔やむ。
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