唇の距離 #2

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駅から公園までは緩やかな上り坂で、ゆっくり歩いても10分もかからない。 1週間前に来た時には恐る恐る腰掛けた彼の隣に、今日は迷いなく腰を下ろせる。 少し近くなった距離がくすぐったくて、嬉しかった。 「あー、気持ちいい」 戸川君がベンチの背もたれに仰け反った。 「うん。寝ちゃいそうだね」 「トイレでも寝る奴だからな」 「もう…寝てなかったってば」 しばらくは酔いに任せて、たわいもない会話をしながらベンチで二人、夜空を眺めた。 会話が途切れても、 その沈黙すら心地よく感じられる。 夜風に当たりながら、戸川君も同じように感じてくれてたらいいなと願った。
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