唇の距離 #2

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アルコールのけだるさに目を閉じて、虫の声に耳を傾ける。 「…寝るなよ」 「うん、起きてるよ」 「…今日もあいつ来るかな」 二缶目のビールを開けながら戸川君がボソッと言った。 あいつ、って崎田さんだろう。 「…さすがに早帰りの日は 彼女と会ってるんじゃない?」 「さあ、どうだろうな。 あの二人、揉めてるみたいだし」 「揉めてる?」 戸川君の話によると、新しい彼女は小野寺唯さんというらしい。 小野寺さんは休憩室の悶着を当然ながら聞いていて、崎田さんが元カノである私のところに押し掛けたことを知ってしまったそうだ。
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