唇の距離 #2

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嫌悪を隠そうともしない子供じみた態度が可笑しくて、戸川君のが腹黒だよ、と笑う私に、戸川君がふと真面目な顔になった。 「なぁ。あいつとまだ連絡取ってんの?」 慌てて首を振る。 「まさか! 着信拒否にしてるぐらいなのに」 「…そっか」 短く答えると、戸川君は夜景の方を向いて大きく伸びをした。 「とにかく、あの休憩室は鬼門だよな。そもそも、事の起こりはお前があそこで」 「言わないで!分かってるから」 背中越しでも戸川君が笑ってるのが分かる。 あの最初の夜を思い出す。 泣いてボロボロの私と 戸川君が偶然出くわした休憩室。 あの場所にまつわる感情は、 私の中でもう意味が変わっている。 戸川君の背中を見つめながら思う。 あの夜は涙にまみれた最低な夜から、戸川君との出会いの夜になりつつあるんだ。
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