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嫌悪を隠そうともしない子供じみた態度が可笑しくて、戸川君のが腹黒だよ、と笑う私に、戸川君がふと真面目な顔になった。
「なぁ。あいつとまだ連絡取ってんの?」
慌てて首を振る。
「まさか!
着信拒否にしてるぐらいなのに」
「…そっか」
短く答えると、戸川君は夜景の方を向いて大きく伸びをした。
「とにかく、あの休憩室は鬼門だよな。そもそも、事の起こりはお前があそこで」
「言わないで!分かってるから」
背中越しでも戸川君が笑ってるのが分かる。
あの最初の夜を思い出す。
泣いてボロボロの私と
戸川君が偶然出くわした休憩室。
あの場所にまつわる感情は、
私の中でもう意味が変わっている。
戸川君の背中を見つめながら思う。
あの夜は涙にまみれた最低な夜から、戸川君との出会いの夜になりつつあるんだ。
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