唇の距離 #2

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続く沈黙に耐えられなくなって、 話題を変えようと立ち上がった。 「…ね、あそこまで届くかな? 私もあのゴミ箱にこの缶――」 戸川君みたいに、私も空き缶をゴミ箱に投げ入れようと思った。 だけど、お酒に弱いのにビールとチューハイを続けて飲んだ私は、思っていたよりも酔いが回っていた。 「う、わ……っ」 立ち上がったはずが、 膝に力が入らず、腰砕けに崩れた。 「おい…!」 ぐいっと両腕を引かれて、 「……っと」 戸川君に抱き留められた。 「……あぶな」 「ごめん…」 謝りながら見上げた戸川君の顔があまりに近くて、彼の目を見つめたまま視線を外せなくなった。
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