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何に対する「ごめん」?
彼に泣かされたことなんてない。
もしかして、私の気持ちがあからさま過ぎたのなら。
応じられない「ごめん」?
彼の言葉の意味も、空気の変化の理由も、私にはまったく理解できなかったけれど、口に出して訊ねる勇気もない。
ただ放された体が拒絶されたようで、ひどく頼りなくてやるせなかった。
「…酒、本当に弱いんだな」
私が落とした空缶を拾いあげながら戸川君が言った。
「こんなジュースみたいなもんでよく酔えるな」
さっきまでの空気を払おうとするかように、戸川君がいつも通りの口調で言った。
「今日はたまたま。でも大抵、一缶でいい気分になれちゃうけど」
私も無理に態度を繕いながら
同じように返した。
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