唇の距離 #2

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「…じゃな。 早く寝ろよ。おやすみ」 鍵を開けるところまで見届けた戸川君は、やっぱりいつものようにあっさりと背中を向けて歩きだした。 いいから早くドア閉めろ、 と言い残して。 そんな当たり前の態度も、今の私にはやけに素っ気なく思えてしまって、これ以上引き止めるなんてできなかった。 「はぁ…」 彼の足音が消えると、ドアに寄り掛かって両手で顔を覆った。 指の間からため息が漏れる。 「情けな…」 彼、振り返りもしなかった。 あの“ごめん”は、 やっぱり拒絶なのかもしれない。 浮気されたこと、 心変わりされたことならある。 でも、こんな風に拒絶されたことはなかった。 目を閉じたりして…。 まるで“据え膳”だ。
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