唇の距離 #2

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「ここいいね。 五年以上住んでるのに、私、駅の反対側に来るの初めて」 居心地のいい席に落ち着いて、 こじんまりとした店内を見回した。 「意外とそうだよな? 俺も反対側行ったことなかったし」 適当にお惣菜とビールを注文してから戸川君はまた続けた。 「そこの駅前のマンションあるだろ? 渡米前、あそこに住んでたんだ」 「え!同じ駅だったんだ」 彼のことを知らなかったんだから当然、見かけた記憶もない。 私はなんてもったいないことをしてたんだろう。
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