唇の距離 #2

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「だから、職種に幅のある大企業に入って、課せられる仕事を乗り越えていけば、何か見つかるかなって」 「自分の適性は、客観的な判断に委ねてみるってことだよな」 「そう」 「で、なんか見つかった?」 「うーん…。まだ、かな」 二十代後半になってもまだ夢が定まらない自分が恥ずかしかった。 「マーケティングはまったく未経験で手探りだけど、完全に究めるまでは投げ出さない、と思って頑張ってきた。でも…」 結局は机上の空論と 揶揄されてること。 会社の役に立てているのか、 疑問を感じていること。 「…まだまだ、だね」 営業の戸川君に言うのはためらわれて、途中でごまかした。
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