唇の距離 #2

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仕事の話に終始するうちに、ほどなくお店のラストオーダーの時間になった。 「ごめんね。私のせいでスタートが遅かったから」 「ほんとだよ」 言葉とは逆に笑顔で戸川君が伝票を持って立ち上がった。 「さ、飲みなおすぞ」 さっさと会計に向かう戸川君の背中を慌てて追う。 「考えてみたら、 今日の本題、何も話してないな」 ……そうだった。 途端に肩が落ちる。 「崎田の話なんかがツマミだと、 酒がまずくなるけど」 「あ、待って、お会計…」 お前は後の飲み代担当だと言われて、渋々お財布を引っ込めた。
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