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「台車がじりじりとこちらにむかってる。距離は約百二十メートル。左右から二台だ」  兵士の死体を装甲代わりに使用した台車だった。その背後には1組が誇る優秀な狙撃手が伏せている。台車を押すのは兵士二名。五王龍起(ごおうたつおき)が3組との決勝戦のために繰り出してきた秘密兵器だった。 「カザン、ジョージ、きてくれ」  塹壕の左右に散開していた副官を呼び寄せる。腰を折って駆けてきたふたりにいった。 「意見をききたい。この状況をどう評価する?」  カザンが間髪(かんぱつ)をおかずに叫んだ。 「どうもこうもないだろ。塹壕近くまであんな台車がきたら、おれたちはただの的だ。おまえが最初にいってた突撃隊を今すぐだそう。こっちも犠牲覚悟で突撃すれば、あの台車の狙撃手とエンジンふたりは潰(つぶ)せる」  ジョージが冷静に計算する。
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