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『えー? 遺跡の端っこじゃない、そこー。ま、いいか。急いで来てよ。あたし、きれいなお魚見つけたんだよー』
宝生美羽は今年一緒に海星学園高等部に入学した悠の幼馴染みだ。家が隣同士でお互いの両親も四人ともが同級生。自然と仲が良くなって、家族ぐるみで付き合っている。毎年両家合同での旅行が恒例となっていて、今年はこの与那国島へと来ているのだった。
悠は内心「めんどくさいなぁ」と思いながらも、「分かったよ」と返事をし、アッパーテラスへと向かって、フィンで水中を蹴った。
しかし、それは一回で終わった。
(何だ、あれ? さっきはあんなの無かったと思うけど)
悠が“それ”を見つけたからだ。
星の形をした《亀のモニュメント》の中心が、薄っすらと青い光を放っている。
ここは透明度の高いスポットだが、いくら太陽光を受けたところで、これほど光ることはない。悠はそう思った。
しかも。
その光は、おぼろげながらも“手の形”をしていた。
まるで「ここに手を置け」といわんばかりに手を広げた形に光っている。
(なんかの認証装置みたいだな)
いつか観たSF映画に登場した機械にも似ている。悠は不思議に思いながら、吸い寄せられるように手形へと進んだ。誰かがダイビンググローブの夜間発光装置をうっかり作動させてしまい、それがここに反射しているのかも知れない。そんな推測までしていた。
(反射なら、自分の手を上にかざせば影が重なる)
軽い気持ちだった。ただ、自分の推理を証明したい。悠はそれぐらいの気持ちで――手を、重ねた。
影は、出来ない。手形は光を維持していた。
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