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「なっ!」
大声を発したせいで、悠のレギュレーターからゴボボボボと大量の気泡が溢れた。
驚き大きく見開かれた悠の黒い瞳は、亀のモニュメントの傍らに屹立する固い岩が、ゴゴゴゴゴと音を立てて開いてゆく様子を映していた。高さは一〇m、幅もそれぐらいはあるだろう岩が、軋みながら開いてゆく。水中に砂塵が舞い、視界はどんどん悪くなった。
『これは、扉?』
回遊していた様ざまな魚たちが、素早くそこから逃げてゆく。対して、悠は動けない。体がその場に固定されてしまっていた。
もうもうとした水中には、雲間から差すような光が煌いている。そして、立ち昇る砂に煙る開ききった扉の中で、“何か”がのそりと動いた。
扉の中には光が届いていない為、はっきりと見えないが、悠にはそれが何か分かった。周りとのコントラストで輪郭だけは把握出来たからだ。
しかし、悠は首を振った。そういう風にしか見えないが、だからといって、それをすぐに肯定することは出来なかった。
「そんなバカな……」
それは人の形をしていた。
そして、巨大だった。
つまりは、巨人ということになる。
こんな海底遺跡の岸壁から、人が出てくるはずがない。それが巨人だったなど、さらにあり得ないことだろう。
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