第1話

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開け放たれた窓 ここからなら飛び降りても平気だと、猫は内心にやりとし、表情は変えずに先の曲がった尾をゆらりと揺らした。 窓のすぐ下には主が拾ってきた花達が太陽にむかってのびている。 光に照らされた花は風にゆられ、笑い声のようにさわさわとなった。 その少し先、窓から1メートルほど前には灰色のブロック塀がある。 主が拾ってきた猫は、どうやらそこに飛び降りたかったらしい。 らしいというのは、実際その猫が飛び降りた先はブロック塀よりまた少し先の 灰色の道路だったからだ。 どん、と鈍い音がする つづいてタイヤが悲鳴をあげた。 花達はざわざわと、野次馬のように騒ぐ。 猫は声もあげず その小さなからだはぴくりともしなかった。
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