奇跡を知った日

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「お母さんはいつプロポーズされたの?」 この質問をしたのは、私、新井まゆ(アライマユ)が12歳くらいの時である。 母には「まゆはおませさんねぇ」と笑って軽く流されてしまった。 その時から私はこの話には触れてはいけないような気がして、触れないできた。 だから、まさか母の方からそんな話をされる時が、来るなんて思ってもみなかった。 「ねぇ、まゆ。昔あなたいつプロポーズされたのって私に聞いたわよね」 「うん」 「あの時私はまだ早いと思って答えなかったけど、あなたも高校生だし、もう話してもいい頃だとは思っていたのよね」 母はキッチンの皿を洗い終え、自分の手を拭くと、リビングの私の前の席に座った。 「で、まゆ。昨日私に結婚って意味あるの?って訊いたわよね。同棲でいいじゃないって。だからこれはちゃんと話しておこう、って思ってね」 確かに私は昨日母にそう訊いた。 そもそもは学校の友達が言っていたことなのだが、私はそう問われて、答えに詰まってしまった。だから母に訊こうと思ったのだ。 「訊いたけど、プロポーズの話と何の関係があるわけ?」 今の私には結婚の意味の話よりもプロポーズの話の方が興味がある。結婚の意味なんていう話よりも先にプロポーズの事を聞きたかった。 母はそんな私を見て「ふふふ」と笑うと、口を開いた。
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