奇跡を知った日

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付き合い始めてから約6年。 喧嘩をしたり、何かとブルーな時期はあったが、泰子と陽平はそこそこ順調な付き合いをしていた。 しかし、まだ結婚という話は出ていなかった。 大学を出て、社会人1年目と2年目でお互いに余裕が無かったこともあり、そういう雰囲気ではなかった。 泰子が勤めているのは、大手通信関連会社の事務部だ。 女性が多い職場だった。 そして、その中に一人、部内でモテている「ちょっとカッコイイ同僚」がいた。 ずっと付き合っている彼がいる、というのは同じ部の女性陣にも、その同僚にも、きちんと伝えていた。 そのはずだったのに「ちょっとカッコイイ同僚」のT君に好かれてしまったのだ。 1年半付き合っていた彼女にふられた彼のやけ酒に付き合ったのが、そもそもの始まりだった。 それを期にT君は、泰子によく絡んでくるようになった。 そして、それを見ていたT君を気に行っていた同僚が泰子に嫌がらせをしてくるようになったのである。 初めは小学校のいじめか、と思う程度の、大した実害はない嫌がらせばかりで、 机の上にゴミが置いてあったり、持ち物が何か無くなったりするだけだったのだが、 徐々にエスカレートしていき、仕事に支障をきたす嫌がらせまでしてくるようになった。 あるときは上司からの伝言を伝えてもらえなかったり、机の上に置いてあった資料を捨てられたり、資料がぬらされたりするようになった。
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