第5話

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15分ほどで呼ばれ、診察室に入りました。 「結婚して何年?」 「他での不妊治療の経験は?」 などを聞かれました。 問診票に書いた子宮筋腫についても聞かれ、その後、触診になりました。 「筋腫は大きめのが2個、他にも小さめのが数個ありますね。妊娠自体にはそれほど影響ない可能性が高いです。ただ、年齢からすると自然妊娠はかなり難しいでしょう」 予想はしていたものの、落胆はしてしまいました。 「タイミング法などから試してみる人もいますが、年齢が年齢ですので、とばして体外受精でいく方がよいと思います」 体外受精。 週刊誌などで目にすることはあっても、まさか自分が経験するかもしれないなんて思ってもみませんでした。 何か遠い世界の出来事で、芸能界とか、テレビの中の話だと思っていましたから。 「試験管ベビー」 という言葉が、ずいぶんと前に注目されました。とても印象的に残っています。私の世代にとって体外受精は物珍しげに見られるものでした。 「とりあえず今日は血液検査をして、後日、結果を見て考えましょう。ご主人の意見も聞いてみて下さい。体外受精ということになると、ご主人にも一度来ていただき、血液検査等を受けていただく必要があります」 その後、採血室で採血されました。 この日の会計は2万5千円ほど。 クレジットカードが使えないので、現金払いです。 次の予約を入れて、本日の診察は終了となりました。 体外受精と聞いて、自分でもどうしたいのかわからず、考え事をしたまま歩き続けました。 やるの? やらないの? 子供が欲しいの? 欲しくないの? できるの? 無理かな。 ぐるぐるといろいろな考えが回ります。 クリニックの窓から眺めたビル群はとても整然としてきれいだったのに、地上に降りて歩いてみると、どこか埃っぽい街並みに思えました。 とりあえず、午後からは問答無用で仕事です。
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