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ただ1つ心残りがあるとしたら、それは自分を最後まで支え続けてくれた年上の弟子のこと。
己の血で赤く染まり、そして次第に暗くなっていく視界の中で、最期の最後の一瞬まで彼のことを考えていた。
「でも、八代はそれに納得しなかった。
もともと私は、最強駒を欲する八代が作り出した、狂気の産物。
私は何にも屈してはならない。
ましてや、たった一人の少年の命を惜しんで自らの命を断つことなど、あってはならないことだった」
『百合』は目を覚ます。
もう地獄は終わったと思っていたのに。
そこは暗い研究ラボの中。
胸に短刀を突き立て、あの激流の中に放り出された体は、まったくの無傷だった。
無傷のまま、『百合』は培養液の中を漂っていた。
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