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昨日の雨が嘘のように、空は青かった。
「…あー……」
蓮は縁台にひっくり返ったまま、意味もなく空へ手を伸ばす。
そしてその手が、どうあがいても澄んだ青をつかめないことを確認すると、パタンと力なく腕を下ろした。
手入れの行き届いた広大な庭を、春の心地良い風が渡っていく。
蓮の黒髪と、纏った衣服の裾が、軽くその風に揺れていた。
蓮の頭上に広がるヘチマ栽培用のネットが、揺らめきながら蓮の上に影を落としていく。
そんな昼寝に最適な場所にいながら、蓮は気だるげではあるがしっかりと目を開いていた。
普段ならば睡魔が訪れに抗うことなく白旗を揚げるのだが、今日はその訪れの気配すらない。
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