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だがヘチマ栽培というのは、何なんだろう。
仮にも一端の財閥の長が、スーツ姿のまませっせとヘチマ栽培に汗を流している図は、呆れを通り越して奇妙な感覚さえ起こさせる。
『癒されるんだよ、健気にツルを伸ばそうとしているところが。悪い?』
その時、蓮の耳に不機嫌な声が飛び込んできた。
「……悪いとは言ってねーよ」
『そうかい? いかにも悪いことみたいな口調だったけど?』
インカムから届く采上稔本人の声は、不機嫌でも耳に心地良いやわらかな声音だった。
「気のせいだろ」
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