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目が覚めたのは、太陽がとっくに昇りきった午前10時過ぎ。
土曜日はいつもこのくらいの時間に起きるので、親も起こしには来ない。
ただでさえ放任主義で、両親共休みの日が週によって違うので、休日でも家に親がいないことは多い。
高校で部活をやっていない俺は、土日は好きな時間に起き、好きな時に食べ、好きなだけ遊び呆けることができるのだ。
ただし、もう一人俺と全く同じ立場の奴がこの家にはいるため、そいつと鉢合わせることがなければの話だが。
「なんだ、お前も今起きたのか」
部屋を出て階段を下り始めると、背後からドアを開閉する音が聞こえ、振り向きながらそいつに声をかけた。
「うん……おはよ」
あれ?どういうことだ?
寝起きの俺の頭は、今目の前の人物から発せられた朝の挨拶のような言葉を理解しきれず、階段を下りる足を止めて固まった。
目の前にいるのは、確かに妹だ。
寝起きなので髪は下ろしているが、寝間着兼部屋着の熊本的ゆるキャラジャージを着こみ、赤縁眼鏡の奥の垂れ目を眠そうに瞬かせている少女は、妹の一歌で間違いない。
今、確かに一歌は言った。
「おはよ」と。
その前に、俺の投げかけた質問に対し「うん」とも言った。
ありえない。
妹は散々俺のことを嫌っていた、というか、最早生理的に受け付けないレベルまで忌避されていたはずだ。
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