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なんせずっと部屋に籠って、ソロでのダンジョン攻略の立ち回りを練習していたもんだから、ろくに家族の様子を把握できていなかった。
「は?な、何って、別に……勉強、してただけだし」
一歌は答えると、箸で上手に摘まんでいた里芋の煮っ転がしを味噌汁の中に滑り落とした。
嘘をつくと指先が微かに震える癖は、未だ改善されていないらしい。
おとんもおとんだ。
年頃の娘が部屋で何していたかなんて、男の家族がわざわざ聞いても嫌われるだけだというのに。
その点、俺は十分に理解して立ち回れている。
愛でたりはしてないが、妹のことは幼い頃から知り尽くしているのだ。
「何見てんの。キモイんだけど」
それなのに俺が一番嫌われているのは一体何故なのだろうか。
「どうせスマフォでゲームでもしてたんだろ。テスト前でもないのに突然部屋に籠って勉強とか、お前がするようには見えないっての」
理不尽な罵倒に、せめてもの意地で言葉を返す。
すると予想通り、正面に座る一歌からキッと睨みつけられる。
更に、俺の足の甲に正面の人の踵が落とされ、俺は痛みに思わず里芋の煮っ転がしを味噌汁の中に落としてしまった。
くそ、こっちは予想外だった。
「どうせ、パソコンの画面しか見てないくせに」
小さな声でそう聞こえた気がしたが、俺の聞き間違いであったかは定かではない。
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