第一話 妹の異変

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  *** 夕食を終えると、冷蔵庫の中にプリンを見つけ、スプーンと共にソファまで持ち運ぶ途中、一歌と目が合った。 何か言っても「黙れキモオタ」と言われる気しかしないので、スプーンを咥えたままプリンを持ち上げ視線で問いかける。 「お前も食うなら出してやろうか?」というニュアンスが伝わった上で要らないという意思表示なのか単にキモイと思われたのか、一歌はわざと視線を逸らし、踵を返して二階へと上がって行った。 もし俺がネトゲに嵌ってなんかいなければ、俺と一歌の関係はもう少し暖かみのあるものになっていたのだろうか。 もう少し、今くらいに大らかに妹の相手をしてやれる余裕があの頃からあれば、一歌は今も俺をお兄ちゃんと呼んでくれていたのだろうか。 いや、別に呼んでもらいたいわけじゃねぇし。 なんて、悶々と考えながらスプーンを握る手を何度も口に運んでいると、すぐにプリンの容器の底が見えた。 妹に嫌われていても変わらず優しい甘さで俺を癒してくれるプリンへ感謝の意を込めた合掌を済ますと、俺も自室へと戻る。 そういえばまだ週刊少年誌を全部読み終わっていないので、それを終えてからダンジョンソロ攻略法の模索をしよう。
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