第一話 妹の異変

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とプランを立てながらとりあえずパソコンの前に座ると、夕食ですっかり忘れていた先程の新人プレイヤーが、未だ俺の目の前にいるのに気付く。 チャット欄には、俺が去り際に残した挨拶への返事が来ていた。 『すみません、間違えて決闘挑んでしまって』 いや、嘘だろ絶対。 と言いたいところだが、確かに、それは完全には否定できない。 このゲーム、〈IAO〉のあるあるネタの一つでもあるのが、相手の〈装備を見る〉という項目のすぐ下、〈決闘〉を誤って押してしまうというものだ。 これは意外と、油断しているとベテランでもやってしまうことがないわけでもない。 初心者プレイヤーなら、レベル90プレイヤーの装備を興味本意で覗きたくなる気持ちは誰にでもあるだろう。 それにしては決闘中殺る気に満ち過ぎていた気もするのだが、相手はちゃんと謝っているのだから、それで水に流せない程の無礼でもない。 もしかしたら「hitoka」も放置して中身がいないかもしれないが、『ドンマイ、あるある』とだけチャット欄に打ち込んだ。 いつもの俺なら、ここで終了のはずだ。 いつもの俺なら、読みかけの週刊少年誌を手に取り、続きを読み始める。 しかし、やはり今日の俺は一味違った。
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