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『すごく良くわかった』
『レートさんすごい』
『本当にありがとう』
疲れた指をほぐしている間に、hitokaからの三連投がチャットログに連なり、俺はパソコンの前で頬を綻ばせた。
ここにもし俺の妹の方の一歌がいたのなら、きっと「何ニヤケてんの、キモ」と言われていたことだろう。
『いえいえ』
とだけ返し、気分が高揚しつつある俺は自分の分身「レート」に光属性即時範囲魔法〈ウラップシャイン〉を意味もなく発動させ、このエリアのボスモンスターなら一撃で葬り去る威力の光を発した。
『それじゃ、早速クエストを進めよう。今どこまでやってる?』
自力でレベル13までいったのだから、クエストが何かも分からないまま、「!」マークを頭の上に浮かべているNPC(ノンプレイヤーキャラクター)に話しかけて多少はクエストを進めているのだろう。
とか思っていた俺が甘かった。
『まだ何もしてない』
『え?じゃあどうやってレベル上げたの?』
『敵を倒せばレベルが上がるんでしょ?』
『そうだけど……ちなみに、このゲーム初めてからどのくらい?』
『1週間とちょっとくらい』
もう一度だけ。
もう一度だけ、頭を抱えてから、俺は気合いを入れ直す。
まだだ、まだ夜は長い。
ただモンスターを倒すよりも、「モンスターを倒すクエスト(通称討伐クエスト)」をクリアした方が遥かに効率が良いしお金や装備がもらえたりするという事実を、俺はなるべく優しい口調でhitokaに伝えた。
それから六時間後。
俺の全力サポートの甲斐あってか、彼女(一応女キャラなので)のレベルは35となった。
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