第一話 妹の異変

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  『どうする、今日はこの辺にしとく?』 時刻は、午前3時より少し前。 画面上で俺のキャラクターである「レート」と向き合う「hitoka」の姿は、数々の戦闘やら任務やらNPCに頼まれたおつかいやらをくぐり抜けた今でも揺るぎない微笑み顔だが、どうやら中の人は相当眠気と疲れがきているらしい。 チャットの返事がどんどん簡素でワンパターンになっていることから、俺はそろそろ潮時と判断した。 『ねむい』 俺も同感。 ネトゲに嵌っているとはいえ、最近は無理せずのんびりプレイを心がけているので、俺もこんな時間まで起きているのは久々だ。 ギルドが盛り上がっていた絶頂期には、ダンジョンを抜けた頃には朝日が昇っているなんてことは日常茶飯事だったが。 今となっては、ネトゲが趣味ってだけの、地味に高校三年間皆勤賞を狙っているような、至って真面目な男子高校生だ。 『俺もちょー眠いし、そろそろ落ちるよ』 『わかった』 〈バーデン海岸〉エリア最初の拠点、〈ギド村〉の村長に海岸で集めた〈巨大蟹の甲羅〉を30個渡したところで、俺達の冒険はひとまず終わりとなった。 〈グリドの丘〉から始まり、〈シルバの森〉を抜け、〈サフテナ砂漠〉を駆け回り、〈砂竜の洞窟〉というダンジョンをクリアし、〈バーデン海岸〉のシナリオクエスト〈海岸の異変〉を第一章だけ終えたところまできて、hitokaのレベルは35へと到達した。
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