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これは普通に適正レベルのパーティで進めるのに比べれば、驚異的なスピードといえる。
hitokaとはなかなか相性が良いらしく、スムーズに進行することができた。
『ありがとう。すごく助かった』
一週間かけてレベル13にしたhitokaにとっては、一気に22もレベルを上げてしまった今日の成果は本当に「すごく」なのだろう。
『いえいえ、俺も楽しかったよ』
本当に久々だ。
こんなに夢中になったのは。
どんどん強くなっていくのが、世界に散りばめられたストーリーを辿っていくのが、誰かと一緒に旅をするのが、こんなに楽しかったということを、俺は久々に思い出せたんだ。
『じゃあ、今日はこの辺で』
あらかじめ設定してあったキーを押して、レートに〈お辞儀〉のアクションをさせる。
『また』
〈ログアウト〉を押そうか、〈フレンド申請〉を押そうか、指を迷わせていると、二文字だけチャットログに表示され、俺は続きを待った。
『一緒に遊んでくれる?』
俺は答えなかった。
答えず、さっきとはまた別のキー「F8」を押す。
右こぶしを勢い良く天に突き上げる動きと、「hitoka」へのフレンド申請が、俺の答えだ。
【 hitoka がフレンドリストに登録されました】
『じゃ、また会おう。いつでも付き合うから』
本当にこれを最後にして、俺は〈手を振る〉のアクションをしながら、〈ログアウト〉の項目をクリックした。
パソコンの電源を切ると、そのままベッドへダイブし、風呂に入るのも忘れて、俺の意識は心地良いまどろみの中に落ちていった。
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