第一話 妹の異変

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そんな、妹にとっては汚物でしかないはずの俺に、まともな返事&朝の挨拶をしてくださっただと? 考えてて悲しくなってきた。 悲しくなりながらも、何の聞き間違いかと「おはよ」の三文字について深く考え直している間に、一歌は眠そうな足取りで俺の脇をすり抜け階段を下りた。 狭い通路で追い越すもんだから、俺より頭一つ低い一歌の髪が肩を掠める。 すると、女の子特有のいい香りがふわりと───しない。 別に臭うわけじゃないが、髪も心なしか艶がないというかボサッとしているというか。 まさか、風呂に入ってないのかこいつ。 別に朝シャン派じゃなかったはずだけど。 ていうか俺も入ってないけど。 いやいや、問題はそこじゃない。 昨日までは俺の半径1メートル以内には決して入ろうとしなかった一歌が、俺の脇を通り抜けるくらいなら俺を階段から蹴り落とさんとしていた妹が、文句の一つも言わずに俺と接触するなんて。 もしかしてまだ寝ているんだろうか。 きっとそうに違いない。 半分寝たまま夢遊病に近い状態で歩いたり喋ったりしているんだ。ほんと馬鹿だなぁ。 しかしその仮説は、俺がリビングに入るとすぐに否定せざるを得なくなった。 「あたし、先にお風呂入るから。ご飯、食べるならあたしの分も用意しといて」 水を一杯飲み干したらしい一歌は、キッチンのシンクにコップを置きながら、まだ瞼の上がりきっていないふやけた表情で言った。 俺の用意した飯を食べてくださるだとう!?
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