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「余計な思い出なんて、残さなくていい」
国家人口管理局『リコリス』情報処理専門官、沙烏。
偽物の未来視で未来を変え、無自覚の内に愛した少女を救った青年。
「思い出は、闇の中へ」
地上へ出ると、そこは温室になっていた。
一年中鮮やかな花をつける彼岸花(リコリス)は、掃除人が片付けた死体の傍らに捧げられる。
干渉を拒絶する、彼岸と此岸の境界を示す花。
「『リコリス』の名の下に、闇の中で永久(とわ)に眠れ」
彼岸花の園に独白を溶かして、龍樹は温室を後にした。
水底を闇で閉じ込めた花園は、ただただ無言で花を咲かせるばかりで。
その鮮やかな深紅の花の色は、血と夕焼けの色に似ていた。
《END》
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