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沙希が視た未来は、変わらない。
今までずっと、そうだった。
「な……ん、で……」
それしか言うことができなかった。
「何で、沙希が、掃除人に……」
『リコリス』の掃除人。
それが何者なのかは、今やこの国の人間ならば幼い子供までもが知っている。
国家人口管理局『リコリス』。
掃除人とは、国家機関の名の下に集められた、対人間処分のスペシャリスト。
つまり、国家お抱えの殺し屋。
先の少子高齢化時代に取られた政策の反動で、今やこの国は養いきれる以上の国民を抱えている。
その国民の中からより優良な人間を優先して生かし、より不良な人間を消し去るために作られたのが国家人口管理局、通称『リコリス』だ。
かつて世界一治安の良い国だと言われたこの国は、今や世界で一番生きていくのが難しい国となった。
ここで生きていくには、明確な存在理由が必要とされる。
社会に大義名分の立つ、誰もが認める存在理由が。
存在理由がない者、存在理由が世間一般に通用しない者、誰にも必要とされなくなった者は、容赦なく片づけられていく。
犯罪者、末期の病人、路上生活者、『リコリス』に『不用者』と通告された者、その全てが掃除人の振るう刃の錆となる。
まるでいらなくなったゴミを、片付けていくかのように。
それだけ斬り捨てていかなければ、今この国は回っていかない。
だから世間の人々は、掃除人という存在に対して見て見ないフリをする。
自分が生きていくためにはそのシステムが必要なのだと、頭のどこかでは理解しているから。
だから公然の秘密とされる『リコリス』を、誰もが声に出しては弾劾しない。
声に出した瞬間、掃除人に片付けられるという現実もそこにはあるのだろうが。
でも、それでも、沙希が片付けられる理由が分からない。
久那の情報と情報処理回路を以ってしてでも。
「私の未来視が、『リコリス』には邪魔みたい」
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