第2話

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   無視していたら、また呼び鈴が鳴る。  「ちょと、めぐちゃん。出てよっ。   宅配かもしれないし。   早くっ」  マジかよ?  なんだよ。だいたい俺は、めぐじゃないっての。  田口 恵、だ。  たぐち、けい。  姉貴は、俺に女装させると、必ず、めぐって呼びやがる。    舌打ちしながら、それでも逆らえない自分が情けないが、一応玄関ドアののぞ き穴から見ると、宅配便の制服を着たあんちゃんらしい、と確認できた。  「はーい」  と女らしく言いつつ、ドアを開ける。  メードちっくな服を着た俺を見て、宅配便のあんちゃんは、一瞬たじろいだ  が、抱えた荷物を差し出した。  「ここに、サインをお願いします」    俺がサインをしていると、あろうことか、このあんちゃん、俺の身体全体をチ  ックするかのように、じろじろ見ていやがった。  同じ男として、ムカつくほどキモかったが、仕方がない。  荷物を売け取ると、さっさとドアを閉めた。    が、受け取った荷物をよく見ると、うち宛てではないことに気がついた。  ん?そういえば、さっきのあんちゃん、片手にもう一つ荷物を持ってたような 気がするな。  くそっ、初歩的なミスしやがって。  俺のメード姿が、そんなに刺激的だったのか?  とにかく早く知らせないと、あとあと面倒だ。  この姿で外へ出るのは、さすがにためらわれたが、姉貴が糞をし終わるまで待 っているわけにもいかない。  突っ掛けを履いて、表に出る。  左右見渡すと、坂の下の方に宅配便の車が止まっているのが見えた。
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