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君は、何を想ってあの時
僕に声を掛けたのだろうか。
待ち受ける悲劇にもこんな想いをするとも知らずに声を掛けたのだろうか?
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僕の目の前に広がる無惨な遺体。
何度も何度も狂ったように刺されている。
桜吹雪が悲しげに舞う。
「君が殺したの?」
からかうような口調の声が聞こえてきて、そちらに顔を向ける。
桜の木に寄りかかりながら、無表情でこちらを見据える男装の女。
「何者ですか?」
「通りすがりの町人。」
絶対、馬鹿にされてる。
無表情なのにせせら笑われてる気がする。
それより、通りすがりの町人が男装をして二本差しの訳ないでしょ。
それに、この死体を見て動じないこと自体、不自然。
「通りすがりの町人が男装をして二本差しとは、驚きですね。」
「へー。分かるんだ。」
「見るからに女じゃないですか。」
「ま、答える気はないけど。で、君が殺したの?」
ゆったりとした物腰で聞いてくる女。
「僕じゃありませんよ。」
「だろうね。いくら沖田総司でもそこまでやれば、狂ってる。」
僕の名前を呼んだときの冷ややかな声の響きに、もしかしてという疑惑が生まれる。
「あなた、長州ですか?」
「さぁ?ただ、そいつは長州だね。」
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