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「そいつ」とは、この死体のことだろう。
でも、そいつを知ってるって事はこいつも長州だよね。
刀をいつでも抜けるようにしながら、女を見る。
「クッ…クク。疑ってるね。」
無表情で笑う女に恐怖とは別の感情を覚える…。
多分、それは興味。
「君の質問に何一つ答えるつもりはないよ。」
「じゃあ、僕に何のようですか?もう直ぐ、鬼が来ますけど。」
死体を見つけて、隊士を屯所に伝令に行かして暫く経つ。
そろそろ、土方さんたちが来るはずだ。
「鬼に用はないんだよ。沖田総司…、君と手を組みたい。」
相変わらずの無表情だから、何を考えているのかが分からない。
手を組みたいならもう少し信用に足る発言をするよね?
「冗談に付き合うつもりはありませんよ。」
「そんな、冗談言うほど私も暇じゃないよ。」
「なら、どういう意味ですか?」
「私は、この下手人に用がある。君たちは、捕まえたい。目的は同じだよ。双方でしか得られない情報もある。だからだよ。」
僕たちがこの下手人を捕まえたい?
なぜ?
こいつが、長州だというならそこまで捕まえたいと思わない。
「その顔、知らないんだ。この下手人と君たちの隊士を惨殺した下手人は、同一人物だよ。」
「な!?」
「その言い方にも間違いはあるかな。近頃、起きてる無差別な惨殺は同一人物の犯行。」
サラサラと女の黒髪が揺れ、僕を惑わす。
告げられた真実と無表情なのに挑戦的な目。
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