三章

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「お前、何に怯えてんだよ。伝えなかったらその女には二度と伝えることは出来ねえんだぞ。」 「分かってますよ!!でも…。」 「でもも糞もヘッタクレもねえだろうが。お前がその女を好きで、死んで欲しくなんかはない。けど、女を止めることは出来ねぇ。なら、残りの時間をどう過ごすかだろう。」 「今日から二週間会えないんですよ。次に会えるのは、今月の半ば…。そしたら、残りは一週間とちょっとですよ?」 「俺ならその一週間は、死んでも離さねえけどな。永遠に会えなくなるんだから。」 永遠に会えなくなる。 一週間しかない。 確かに、土方さんの言うとおりだ。 「アハハ、確かにそうですね。土方さんに諭されるとかイヤだなぁ。」 「経験がちげえんだよ。」 「僕、伝えますよ。ちゃんと。」 「それでこそ、男だ。」 また、軽く頭を撫でて部屋に戻っていく土方さん。 ねぇ、桜…。 次にあったときは、君に伝えるから。 この思いを…。    ********** 「随分と物思いに更けてるな。」 「そう思うなら声を掛けないでくれる?」 酒を片手に私に絡んでくる牛に冷たい目を向ける。 「悩んでんのか?悩むくらいなら止めちまえよ。」 別に俺は、お前に死んで欲しい訳じゃねえし。とかいいながら酒を呷る牛。
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