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神社には初夏の風が優しく吹く。
相変わらず木に寄りかかっている桜の黒髪が揺れる。
「桜…。」
「何?…っわ!」
桜が振り向くより前に思いっきり抱き締める。
この二週間。
ずっと考えてた。
言わな言ほうがいいのかなとか…
でも、やっぱり伝えたかった。
「総司?」
「桜…。好きです。桜が死ぬつもりでも居なくなっても桜が好きだ。」
「つ!」
桜が思いっきり息を呑んだのが分かる。
抱き締めるだけじゃ足りなくて少しだけ、桜から離れて口付ける。
「ん…。…はぁ。」
唇を離せば、少しだけ潤んだ瞳をした桜が真っ直ぐに僕を見る。
「私のこともう分かってるんだよね。」
「分かってますよ。あなたが吉田稔麿だって事も、命と引き替えに倒幕に傾けようとしてることも、全部分かってます。」
「私は、君の敵だよ。」
無表情な桜の瞳に涙が溜まっていく。
「それも知ってます。だから、残りの時間を僕にくれませんか?会える時間全てを、僕に…。」
「そんなことしたって私は、死ぬんだよ!」
初めて声を荒げた桜の頬に伝う涙を親指で拭う。
「全部分かってます…。それでも、あなたの時間が欲しいんです、桜。」
「総司…、君は馬鹿だよ。」
「知ってます。」
「総司…、好き。」
「それも知ってます。」
軽くほほえみ桜に口づけをする。
僕の背に回った桜の腕を、柔らかい唇を僕は、永遠に忘れることはないだろう。
残された時間は、想像より短かったとしても。
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