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「上履き、交換してもらったか?」
「おん。ちょっと温くてキモチワルイわ」
「そうやろな」
含み笑う渋谷を見て安心した錦戸は、満を持して話しかけた。
「すばる君、髪のびたね」
「そぉか?」
「のばすん?」
「うーん」
真ん中で分かれ始めた前髪を触り、渋谷は答えに窮した。髪型に関して特に何も考えていなかったからだ。
そんな渋谷を見て錦戸は堰を切ったように話し始めた。
「のばしたほうがええよ!絶対、のばしたほうがええ!」
「お、おん。そぉか、そぉしよか」
余りに真剣な錦戸の目に気圧され、渋谷は思わず承諾する。
錦戸はそれを聞いて、口角を上げ、心底嬉しそうに笑った。
「じゃ、亮。俺、職員室寄ってくわ」
「おん。すばる君、バイバイ」
錦戸は角を曲がる渋谷が見えなくなるまで、手を振っていた。
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