96人が本棚に入れています
本棚に追加
/80ページ
*
「あ、よっかあま先生。村上君、今日おらんで」
「なんでヒナに用があることになってんねん」
放課後、ふらっと生徒会室に立ち寄った横山は、錦戸に村上の話題を振られ、分かりやすく不快感を表した。
「ちゃうん?」
「どっくんに用があるんやで?」
「あ、そーなんや」
錦戸は、照れ臭そうにはにかみ、長いまつ毛を何回も瞬きさせた。
「そうやで。食うか?」
「何?」
横山は手にしていたアーモンドのチョコレートを差し出し、錦戸に薦めた。
「アーモンどう?……うふふふふ」
「よかーま先生、自分で言うて笑ってたら、世話ないで。もうそれ完全に親父ギャグやん」
「俺もう32やで?もう十分オッサンやろ」
「オッサンにしては、残念なくらいアホやな」
「そうそうそう。だからこうやってアーモンドでビタミンBをって、何でやねん!」
「ノリツッコミはじょーずやな」
「よっしゃ!誉められた~ぁ!」
ことのほか嬉しそうにガッツポーズをした後、チョコレートを口に運んだ横山をじっと見つめる錦戸。
「____口にチョコついたで」
「可愛ええやろ」
「…」
「モテるやつやん」
「……」
「どっくん、なんか言うてくれよ」
「ごめん、何が正解かわからんかった」
不甲斐なさを浮かべる錦戸に横山は微笑み、チョコレートの箱を錦戸に渡した。
「持って帰ってヤスと食べ」
「おん。ありがとう。で、用って何?」
「あ、なんやったっけ?リアルに忘れたわ」
「アホや!この人ホンマにアホや!」
最初のコメントを投稿しよう!