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「すばるぅ~、風呂行かんか?」
いつでも準備万端の村上は、ベッドでうつ伏せになり、動く気ゼロの渋谷に声をかける。
「うーん。ええわあ」
「きったな!」
「マルんとこで入る」
“マルんとこ”とは、教員用の風呂を使用するという意味である。
「あ、そう。好きやな、あんた。マル。」
村上に丸山との関係を伝えているわけではない渋谷は、驚きで半身を起こし、目を見開いて村上を凝視した。
「ん?ちゃうの?」
村上はなんの含みもない表情で渋谷を見やり、替えの下着を袋にせっせと詰め込んでいる。
どうも、渋谷の杞憂だったようである。
「いや…まぁ…。ヒナやって、好きやん、ヨコ」
「好きやで。めっちゃ好き。そういう意味で好き!」
「お前はぶれへんな~」
「せやろ(笑)。こないだ告白してん」
「うそやん!」
「ほんま」
「で?で?」
「アカンて。」
「なんやねん、アイツ。絶対ヒナのこと好きやで。恥ずかしがってるだけやろ?」
「真意はわからへんけどぉ…、約束はした」
「なんの?」
「俺が志望校一発合格したら、キスしてもらうねん」
「うわあ~!青春やなぁ!…けど、ヒナ。それだけでええんか?」
村上は口をぷくっと膨らまして、頭を左右に振った。
「どうすんねん」
「勝てへん試合でも、どうにかする」
「ヒナ~ァ!」
村上の男らしい発言に渋谷は破顔する。
「二年入ってくるし、行ってくるわ」
「おう、行ってこい」
渋谷はサムズアップで村上を送り出した。
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