午前3時のファズギター

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「すばるぅ~、風呂行かんか?」 いつでも準備万端の村上は、ベッドでうつ伏せになり、動く気ゼロの渋谷に声をかける。 「うーん。ええわあ」 「きったな!」 「マルんとこで入る」 “マルんとこ”とは、教員用の風呂を使用するという意味である。 「あ、そう。好きやな、あんた。マル。」 村上に丸山との関係を伝えているわけではない渋谷は、驚きで半身を起こし、目を見開いて村上を凝視した。 「ん?ちゃうの?」 村上はなんの含みもない表情で渋谷を見やり、替えの下着を袋にせっせと詰め込んでいる。 どうも、渋谷の杞憂だったようである。 「いや…まぁ…。ヒナやって、好きやん、ヨコ」 「好きやで。めっちゃ好き。そういう意味で好き!」 「お前はぶれへんな~」 「せやろ(笑)。こないだ告白してん」 「うそやん!」 「ほんま」 「で?で?」 「アカンて。」 「なんやねん、アイツ。絶対ヒナのこと好きやで。恥ずかしがってるだけやろ?」 「真意はわからへんけどぉ…、約束はした」 「なんの?」 「俺が志望校一発合格したら、キスしてもらうねん」 「うわあ~!青春やなぁ!…けど、ヒナ。それだけでええんか?」 村上は口をぷくっと膨らまして、頭を左右に振った。 「どうすんねん」 「勝てへん試合でも、どうにかする」 「ヒナ~ァ!」 村上の男らしい発言に渋谷は破顔する。 「二年入ってくるし、行ってくるわ」 「おう、行ってこい」 渋谷はサムズアップで村上を送り出した。
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