午前3時のファズギター

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錦戸が風呂場の更衣室に入ると、先客の村上が片腕を上げ自身の二の腕に唇を押し付けるという珍妙なポーズをとっていた。 「どしたん、村上君。腋でも臭うん?」 錦戸は、村上が受験のストレスでおかしくなったのではないかとかなり心配し声をかけた。 「ちゃうわぼけぇ、キッスや、キッス!」 「え?」 「ここのぉ、二の腕のところんが、唇と同じ感触なんやて」 「それ、おっぱいやろ?」 「あ、そ-なん?」 八重歯をむき出しにして笑うしっかり者の先輩は、意外と天然なところがあるのだと錦戸は微笑ましく思うのだった。 「ね、ね。村上くぅん」 「なんや?」 「すばる君、今、中におる?」 「すばる?マルんとこ行っとるで」 「マルって丸山先生?」 「あ!これアカンかったかな?」 「え?何?」 村上は人差し指を口に当て、錦戸に顔を寄せた。 「しーやで?すばる、時々教員用の風呂使わしてもろてんねん。マルと仲ええからさぁ。ホラ、共同浴場だと忙しないやんか。今みたいに油断すると2年も1年もどちゃどちゃ入ってきよるしや」 「そうなんやぁ…」 渋谷と入浴できる可能性を殺がれた錦戸はがっくりと肩を落とし、勢い制服をどんどん脱いでいく。 「そっちこそ、妖怪ケツ洗いはどうしたん?いつも双子みたいに一緒やん」 「ヤス?ギターの練習するから後でええ言うて」 「そぉかぁ。て、脱ぐんはや!亮は何するにも早いな!」 村上に褒められた錦戸は照れくさそうに笑い、引き締まった体を惜しげもなく晒して浴場に消えていった。
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