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「ホラ、マル、ちゃんとよこちょに説明せんと!」
「うん…」
目が泳ぎっぱなしの丸山。その丸山を鼓舞する安田。2人を目の前にして困惑する横山。
「ごめん、ヤス。俺、状況がぜんっぜん、掴めへんねんけど…」
「よこちょは黙ってて!」
横山が安田の語気に圧倒されるが早いか、丸山が額が擦り切れんばかりに土下座をして叫んだ。
「ゆうちん、ゴメンナサイ!俺、学校辞めます!」
「え?ちょ、なんの話?」
安田は丸山の身体を起こしながら、重い口を開いた。
「よこちょ、マルがしぶやんと付き合ってたの知ってた?」
「え?___ん、まぁ、そうなんちゃうかなとは思ってたけど…」
(バレバレや、俺には)
「生徒で知ってんのは俺ぐらいやってん。でも、こないだ他の生徒にバレたらしくて。めっちゃすごい勢いで拡散されとるから、PTAマルちゃん血祭りや、思て。」
「ヤス、マルちゃん血祭りはなんかちゃう。おもろいお祭りみたいになってるやん。____オイ、マル。すばるはなんて言うてんねん」
横山が丸山に視線を向けると、丸山はぎこちない字で書かれた退職願が握りしめていた。
「“しゃーない”、言うてはります」
「…」
「“俺とお前のどっちか辞めなアカンな”て、言うてはりました。…すばる君は、すばる君だけは!____傷つけたくない。俺が、俺が辞める!」
「マル!」
横山は退職願を取り上げた。
「これは俺が預かっとく。お前は勝手に動くな。ええな!」
横山は安田に“少し時間をくれ”とだけ告げて、丸山と一緒に部屋を出た。
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