悪魔が僕を

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* 「終わった?」 扉を開け、ひょっこりと顔を出す大倉の明るい笑顔と低めの優しい声音に、安田は不覚にも泣きそうになってしまう。 「おーくら、ありがとぉ」 大倉の部屋は一人部屋で、寮の一番端という密談には絶好の位置だったため、安田は部屋を提供してもらったのだった。 「マル、アカンかも…。煽った俺のせいや。俺のアホ!アホ!」 自己嫌悪に陥った安田は、頭をぶんぶん振り、その反動で立ち眩みぐらりと大倉に倒れかかった。 「あぶな!」 大倉は慌てて安田を受け止めたが、はずみで唇が触れ合ってしまった。 大倉が口元押さえて「ごめん」と呟くと、安田は「だ、ダイジョブやで、おーくらとは初めてやないしっ」と顔を真っ赤に染めた。 「え?」 「あ。」 安田は大きく目を見開いて、分かりやすく“しまった!”と言う顔をした。 「やっぱり!部室で俺にチューしたやろ!」 「…した」 「ヤスッ」 「うわぁっ!」 真っ赤になってうつむく安田を、大倉はタックルするような勢いでベッドに押し倒す。 「俺、ヤスが好きすぎて、頭おかしなったんか思った。夢や夢や思っても、唇の感触残ってるし…」 黙って見つめあった二人は、恐る恐る、一回だけ、慎重に唇を重ねた。 それからしばらく、大倉は安田のひとまわり小さな体を覆い被さるようにして、ぎゅうぎゅうと抱きしめていた。 「おーくらぁ」 「なに」 「ちんちん、硬いで」 「…」 大倉は赤面したまま黙っていたが、ボソッと「…ヤスに挿れたい」と呟いた。まさかの展開に、安田は顔面蒼白になる。 「___やめろや!マジで無理や!」 「俺のこと、好きやないん?」 「好きやけど、無理なもんは無理や!」 「やってみなわからへん!」 起き上った大倉は、安田を組みしいて少しずつ衣服をくつろげていき、露になった肌にキスを落としていく。 「おーくらっ」 年上とは言え、体の大きさでは勝てない安田に為す術はない。短い手足で一生懸命抵抗するが、あまり効果はみられなかった。 「おーくら!…おーくらぁ!やめろってホンマッ。おーくらぁっ、おーくら………こんなんイヤやぁ~」 遂に泣き出してしまった安田を見て大倉は、「ごめん!」と言いながらベッドから飛び降りた。 「お前なんか嫌いやぁ!出てけぇ!」 大倉は“俺の部屋やねんけど”と心の中で突っ込むよりほかなかった。
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