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渋谷が退学した。
相部屋の村上が気がつかないうちに荷物をまとめた渋谷は、年明けとともに姿を消した。
大学入試を受けて帰った途端、一人部屋を宛がわれた村上の怒りの矛先は、丸山に向いた。
「あかんがれっ!なんさらしてけつかんねっ!!」
入試問題の回答の是非のため休日出勤していた教師達は、非常階段付近から聞こえる村上の卑俗な罵声にざわめいた。
抵抗しない丸山の襟首を掴んでぐらぐらと揺らしている村上を見つけた横山は、即座に2人を引き剥がす。
「ヒナッ!何してんねん!おい、マル、なんか言え!」
「なめとんのかコルァ!なんですばるが辞めなアカンねん!おどれしばく!」
「ヒナッ」
興奮しきっている村上を羽交い絞めにする横山は、絆創膏だらけの丸山の両手に目を留めた。
「ゆうちん、ええねん。俺が悪い。すばる君にあんな決断させたの、俺がヘタレやからやしさ」
「ちゃうやろ、マル?2人で決めたんやろ?」
「ゆうちん、俺……。ごめんっ!」
丸山は掴みかかろうとする村上の腕を払い、脱兎のごとく逃げ去った。
「ただで済む思てけつかんのかぃ!」
あまりに極悪な怒号とは裏腹に、村上の大きな垂れ目は涙で溢れていた。震える村上の拳を掴んで引き寄せ、横山は村上を抱きしめる。
「ヒナ!」
「うぅ、すばる、もうおらん。…あんな、部屋がな、ものごっつぅ広うてなぁ…」
「ヒナ」
横山は自分の胸の中で泣きじゃくる村上の頭や背中をゆっくり撫でながら、村上の呼吸が落ち着くまでそうしていた。
「せん、せ。なんで、そんな、に、やさ、しい、ん?」
(お前が好きやからや)
「お前が一生懸命やからかな」
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