太陽の嘘つき

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* 安田が学生寮のトイレで用を足していると、村上が豪快に扉を開けるなり、がに股で進みつつ安田の隣に立った。 「おう、ヤス。久しぶりやな」 「信ちゃん、調子はどぉ?」 「まぁまぁやわ」 「通知とかは」 「ぼっつらぼっつら。滑り止めはいけたけど。まぁ、滑り止めやし。第一志望の発表、明日やねん」 「そうかぁ~。キンチョーするなぁ。でも、信ちゃんならダイジョブちゃいます?」 「俺もそう思う」 安田は予想通りの返事に安心して笑い、ズボンのチャックを上げて洗面台へ移動する。 「なぁ、信ちゃん。仮に、やけどなぁ。好きな人にされて、嫌なことってある?」 意外な安田の発言に、村上は顔を安田の方へ向けた。 「暴力ぅいうのんは、いただけんなぁ。それ以外やったらかまへんのとちゃう?」 「ホンマ?」 「なんや、なんか悩んでんのか?」 「なんやろな。自分でもようわからへんねん」 村上は安田の不安そうな横顔を一瞥してから正面を向き直し、説き伏せるように話しだす。 「俺は、相手がホンマに望んでることやったら、ガチでぶつかっていきたい思とるよ。結果な、俺が凹むようなことになっても、相手が傷つくより、マシやんか」 そう言って用を足し終わった村上は身体をぶるっと震わし、しばらく立ちすくむ。 「ヤス」 「ん?」 「俺、会いたいんかなぁ?」 「……」 (西野カナなん?西野カナ的な“会いたくて震える”って意味で言うてんの?) と、流石に突っ込む勇気は安田にはなかった。
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