星ふたつ

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* 錦戸はさして興味のない小難しい本を読みながら、睡魔に襲われるのを待っていたが、なんだか手足が冷え切ってしまって、なかなか眠くならないので困っていた。 読書にも飽きたので、ブックライトを消して布団をかぶってしまおうと思った時、ふと、隣のベッドが気になった。 「章ちゃん…起きてる?」 「…起きてるよ」 「そっち、行ってもええ?」 安田は少し間を置いてから、「おいで」と言って掛け布団をめくった。安田の布団の中に潜り込んだ錦戸は冷えた腕で安田を抱きしめる。そして、ひどく安心している自分に気がつくのだった。 「章ちゃん、あったかい」 「人を湯タンポにすなよ~」 「俺専用の湯タンポになってくれよ!」 「何でやねん!」 「ええやんかぁ~」 錦戸がじゃれて顔を安田にくっつけると、はずし忘れていた眼鏡が安田の頬に当たった。 「イタ。亮、メガネあたる」 「ごめん」 「外すで?」 「おん」 安田は錦戸のレンズの厚い眼鏡を両手ではずした。錦戸はその間、じっと安田を見つめていた。 「見える?」 「章ちゃんしか見えへん」 「何言うてますの」 「なぁ、チューしてもええ?」 錦戸の深い眼差しに安田は少し驚いたが、「アカン。ホンマに好きな人としぃ」と毅然と答えた。 「俺、章ちゃんのこと、ホンマに好きやでっ」 「ありがとぉ。でも、ちゃうやんな」 安田の言葉に錦戸は一瞬口ごもるが、隙間を寄せるように安田を抱き寄せた。 「ちゃうことない。なんでわかってくれへんねん!俺、こんなに章ちゃんのこと、好きなんにっ!」 「亮…泣いてるん?」 「泣いてへんわ」 「亮」 声を出さずに泣く錦戸の震える肩を、安田をそっと摩った。 錦戸が不安定になっているのも、自分が日和見になっているのもわかっていた。 一つ上の先輩が、夜が明けるように消えたことを知った夜だった。
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