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校長とPTA役員にスケープゴートにされた横山が、漸く解放されて会議室の扉から白い顔を覗かせると、廊下に座りこんで待っていた渋谷がすっくと立ち上がった。そのまま横山に近づいて腕をそっと取り、額を彼の肩口に押し当てた。 「ヨコ、ごめん」 「おお…」 横山は肩を抱くにしては弱く、触れるにしては強く、覚束ない渋谷を歩くよう促した。 「なぁ、あそこまで言う必要あったか?」 「イヤ。ええねん。これで」 人気のない廊下をとぼとぼと歩きながら、ぽつりぽつりと話す二人に、真冬の日射しが鋭く照りつける。横山は眩しげに目を凝らして渋谷を呼ぶ。 「すばる」 「…うん」 「ようやった」 細い肩を震わせた渋谷は何も言わずに横山の胸に額を押し付けるので、その小さな頭は白い繊細な手で静かに覆われた。 「車出すわ。昼のバスもう行ってもうたやろ。小一時間来ないやろし。駅まで送る」 「…ありがとぉ」 * 渋谷と渋谷の荷物を車に乗せた横山がバスの停留所を横切ろうとすると、珍しく連れ添う男前二人が見えた。 「あ、あれ。どっくんとおーくらや。アイツら仲ええんやなぁ。肩組んどるで」 「ホンマや」 ベンチで肩を組み、じゃれあいながらバスを待つ錦戸と大倉を、車の中から目で追う渋谷。 横山はそんな渋谷の様子を横目で見てから、正面に視線を戻してアクセルを踏み込む。 「…すばる。お前はもう少しうまくやりゃええのにな」 「うまくやれたら、俺やない」 渋谷は再び前を向き直し、自分の手首をぎゅっと握った。
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