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横山が渋谷を駅に降ろし、錦戸がバスに乗り込み、大倉がバスに揺られて睡魔に襲われた頃、丸山は一人自堕落な生活をおくっていた。
布団から腕だけ出して枕元のティッシュを数枚取っては鼻をかむ。通常より膨らんだの天然パーマを無造作にかきむしっては寝返りをうつ。これでも目下自宅謹慎中である。
洗濯機がけたたましく作業完了を知らせるので、丸山は万年床からもぞもぞと這いだしてのびかけの薄い髭を撫でさすりながら、洗濯槽に片手を突っ込み、軽薄なオレンジ色のジャージを引っ張り出した。
シワをのばすように広げると、袖口に落としきれない血痕が残っていた。
「すばる君…」
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