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『マル~ゥ!』 『すばる君!なにしてはるんですか!ああ、ああっ!血だらけやないですかぁ~!!』 両掌を真っ赤に染めた渋谷が、甘えた声で丸山を呼ぶ。宿直の代行を二つ返事で受けた丸山は、顔面蒼白で渋谷のもとにひざまずき、その細い手首をとる。 『ボタンとろ思たら切れてもた』 『なんで剃刀なんかで』 『ハサミなかってん』 『もう!あきませんよ!没収ですって……シャケーーーッ!』 渋谷の手から剃刀を奪おうとした丸山は、抜群の運のなさで指先を切った。 『マル!』 丸山の意味不明な絶叫にも動じず、渋谷は目を見開いて丸山を心配する。 『俺も切っちゃった。てへ♪』 舌を出しておどける丸山の手首を掴んで自分の方に引き寄せた渋谷は、一度丸山の顔を伺うように見上げてから指先を口に含んでねぶった。 『あっ』 ザラリとした舌の感触にゾクッとして、思わず声を漏らす丸山。 『…マル?』 『あはは。ちんちん、ピクッてしてもうた』 恥ずかしそうに笑う丸山の言葉に、満足げに口角を上げる渋谷。 なかなか血の渇かない傷口に、お返しとばかりに這う丸山の舌に華奢な体はたゆたう。 『だいぶ深く切れてるみたいやから、保健室行くで、治療や治療!』 『舐めとったら治るわ、こんなもん』 『あかんでぇー、ほら、行くで!』 『メンドイ』 渋る渋谷の膝元に転がるボタンを拾った丸山は『なら、こうしましょ』と言ってボタンを低い天井に向かって投げ、片手でキャッチしてそのまま手の甲にあてた。 『表が出たら行きましょ』 『そんなん大概表が出るやろ、コインちゃうねんから!』 『はーい、表が出ましたよ~!』 『うわぁ!』 丸山は渋谷の華奢な体を軽々と抱き上げて悦に入る。 所謂お姫様抱っこである。 『降ろせ!さすがに目立つわ!』 『せやなぁ~。でも、もうみんな知ってはんねやろ?見せつけんのもええんとちゃいます?』 匂やかに微笑む丸山に『どこへでも連れてけ』と半ば捨て鉢に言い放った渋谷は、両腕を丸山の首に回して肩口に小さな顔を埋めた。
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