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「良かったで、答辞」
「ホンマ?」
「おん。……おい、お前、ブレザーめっちゃ綺麗やな。ボタンのひとつやふたつむしられるもんちゃうんか」
「残念ながら売れ残ってもうたわ。大倉あたりがねだってくるかな思てたんやけどなぁ~」
「大倉?」
「おん。昼飯一緒に食うてたしや、ほぼ毎日」
横山は大倉の自分に対するやや反抗的な態度の理由が少し腑に落ちた気がした。
「ヒナ、こっち」
横山は周りに誰もいないのを確認して、村上の手を引き自分のジャケットのポケットに導いた。
「どしたん?」
「寒いやろ」
「まぁ、寒いわな」
「ベタなんもええやろ」
「アハハハ。ええでええで!」
ふたりは横山のポケットの中で手を繋いだまま駐車場まで歩いて行った。
車のトランクをあけて紫色の花束を取りだした横山は、村上に向かって乱暴に差し出しす。
「卒業おめでとう」
「ありがとう。うわ、めっちゃええ匂い!」
「らべんだーや」
「へー」
「どらいふらわーにしたらぽぷりに使えるんやて」
今まで笑いを堪えていた村上だったが、遂にたえられず、花束に顔をうずめて笑い声をもらした。
「くくく」
「おい、何笑ろとんねん」
「いや、あんたさっきから全部ひらがなで聞こえるわ」
「うっさい!乗れ!どらいぶや!」
「うくく。はいはい。」
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