うそが本当に

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* 村上が走り去ってから十数分が経とうとしていた頃、渋谷もひとりで教室に現れた。 「すばるぅ、遅い」 「終わるんが早いんや」 教師を待たせていたとは思えない横柄な態度で椅子を引き、渋谷は横山の前にどっかと座った。 「なにしてたん」 「待ってた」 「来たらよろしやん、俺かて待ってたんに」 そう言う目の前の担任を、渋谷は大きな目を開いて見据えた。 「アカンやろ」 「なんで?」 「イヤやん、ドア開けたらヨコとヒナが愛情のある、のぉーこぉーな愛撫から始まる営みをさ、もぉ、もぉっ!こんな!こんな!なってて。で、ヒナが悶えに悶えてたら。俺、はっ!てなるやん。はっ!アカンやつや、て」 小さな身体とは対照的に、大きな身振り手振りでおどける渋谷。 あのまま村上を受け入れていたらあながち嘘にはならない話に、横山はありきたりな返答しかできない。 「何を言うとんねん、アホか。…タエコは?」 「オカン呼び捨てすな。…まだ!」
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