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「私はね、綺麗なものが好きなの。美しいものが可愛いものが、好きなの。
でもね、そんなものに限って脆い。壊れやすい。すぐ消えてしまう」
女は振り向く。
何かに壁に磔られたように、両腕を左右にまっすぐに伸ばされ、両足を綺麗に揃えて、顔を伏せたセーラー服の彼女を。
「ダメじゃない。綺麗な顔なのに、伏せちゃ。勿体無い」
女は彼女の顔を持ち上げる。
恐怖に歪んだ少女の顔。それを見ないよう、硬く瞑られた眼。
だが、それが無理やりに開かれる。
瞼に触れる無数の小さな手によって。
そして、彼女の瞳に移される異様な女性の姿が。
「妖精」
美しく整った顔、金髪碧眼の美しい女性。しかし、彼女の周りを飛び回るものが異様だった。
妖精。そう表すのに相応しい、とても小さい羽の生えた醜い人。
それらが彼女の体や顔、瞼を動かせないように抑えている。
「んー、少し違うわ。この子達は素材。妖精はどちらかというと、私の方なの。
自分はどこにいるの?なんでこんなことに?なんでこんな化け物が?
そんな顔をしているわね」
彼女はゆっくりと少女の顔を撫でる。
「いったい、なんなのよ!」
「ここはどこでもない。あなたは私の玩具。今日は新しく世界が変わる日。
そして、私の新しい子供の生成の日。私は今この時のためにここにいる。
可哀想な可愛い子供を創るために」
「それが私?」
「そう。星の巡り合わせ。運命。奇跡。偶然。必然。その全てが一致しているの。
さあ、呑み込みなさい。呑み込まれなさい。新しい愛し子の誕生日よ」
無数の妖精たちが身体を這い上がってくる。
妖精たちは這い登り、無理やり口をこじ開け、口が裂けそうになるほどの無数の身体を我先にと捻じ込ませていく。
「んんんnーーー!!??」
「嗚呼、たまらない。今この時だけなのが口惜しい」
「ア"ア"ア"!!!」
妖精は次々と入っていく。さらには、鼻や耳、目の隙間でさえ、入り込んでゆく。
そして、ごきゅんと喉がなり、全ての妖精が中へ完全に入りこんだ。
「可愛い我が子。おめでとう。死んでくれて、産まれ来てくれて」
彼女は少女の身体をまるで赤ん坊を抱く母のように優しく包み込み。
そして、バキッとへし折った。
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